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Doctor Who : Twice Upon A Time

 ドクター・フー: 2017年クリスマス・スペシャルとして放送された12代目ドクターのリジェネレーション・エピソード "Twice Upon A Time" のノベライズ。

Doctor Who: Twice Upon a Time: 12th Doctor Novelisation (Doctor Who: Target Collection)

Doctor Who: Twice Upon a Time: 12th Doctor Novelisation (Doctor Who: Target Collection)

 

 

あらすじ

ターディスの中で意識を取り戻したドクター。外に出るとそこは南極大陸だった。降りしきる雪の中でドクターはかつての自分と出会う。ドクターは覚えていなかったが、彼もまたリジェネレーションすることを拒もうとしていた。

 

 感想

リジェネレーションすることで死を誤魔化し、生きながらえていくタイムロード。そのたびにドクターは死の恐怖と向き合っているのだということは、ついつい失念しがちになる。タイムロードのリジェネレーションはその身体が老いた時、瞑想によって自らリジェネレーションに入っていく。もしくはリジェネレーションを拒み、自ら死を選ぶこともできる。リジェネレーションのエネルギーが尽きたとき、タイムロードはマトリクスに知識を残し、この世を去る。致命傷を負い、リジェネレーション・エネルギーを持ちながら、リジェネレーションのプロセスを無理やり押さえ込んでいると、死に追いつかれ死に至る。

 ドクターは生きるのに疲れ切っていて、死を選ぼうとしていた。戦場から永遠に抜け出せない不毛感、大切な人たちを次々と奪われ、失っていく悲しみ。そういったことに疲れ切っていて、全てを終わらせようとしていた。それを感じ取ったターディスが”時間”に深刻なダメージを与えるリスクを冒し、ドクターとはじめてのリジェネレーションを目前にしている1stドクターを遭遇させる。ターディスがドクターを失いたくなかったということなのだろう。ドクターがいなくなればターディスは一人ぼっちだ。

 一方、1stドクターがリジェネレーションを拒めば、歴史が変わるどころの騒ぎではすまされない。12thドクターは1stドクターがリジェネレーションを恐れていることを悟り、この先に延々と直面することになる未来を知ることから必死で守ろうとする。決して辛いだけの旅にはならない。素晴らしいこともこれから先たくさん待っているのだと優しく背中を押してやりたい気持ちでいっぱいだ。しかし1stドクターからすれば、いずれいきつく先が目の前にいる、身も心も傷つき生きることに疲れ切っている自分であり、しかも今の自分からは考えられないような時間のルールを曲げるような振る舞いもすることになるのだとすれば、ここでリジェネレーションしないことがやはり正しいことなのではないかと気持ちがゆらいでくる。死を目前にした二人のドクター。ドクターの心中を代弁するかのような存在がもう一人、二人の前に現れる。第一次世界大戦の戦場でドイツ兵と至近距離で打ち合う運命にあるアーサだ。アーサは死を覚悟していた。全てを諦めていた。ところが突然この事態に巻き込まれ、もしかしたら自分は助かる運命なのかもしれないという希望を持ってしまう。ひとたび希望を持ってしまったアーサを手違いでしたとまた元の死ぬ運命の場所に戻すことがいかに残酷なことであるかは、『覚悟はできていたはずなのに、助かるかもしれないという一縷の望みを抱いたせいで、今はすっかり怖くなってしまった』という正直な心の吐露からもわかる。どこか親近感を覚えるこの地球人をドクターがそのまま残酷な運命に突き放すことなどできるはずもない。

 そして、ドクターがアーサのために奇跡を起こしてみせる。テスティモニーの目をかいくぐり、戦場に一瞬の奇跡を起こす。皆が少しばかり相手の気持ちや立場を思いやる優しさを持ち、そこから生まれたクリスマスの奇跡。その奇跡をみた1stドクターはそれを選ぶことのできる強さと優しさをもつ存在に自分はこれからなっていくのだということを受け入れる。そして1stドクターは未来の自分を思いやる。どちらの選択をしたとしても自分は理解できるとシンパシーをみせる。

 死んだ人間の記憶をセーブ、知恵として蓄積していく人間が発明したテスティモニー。それはまるでタイムロードのマトリクスの仕組みのようで、ドクターはテスティモニー存在を嫌っていたが、ビルの記憶、ナードルの記憶、そしてクララ。ドクターの中に欠如していたクララの記憶が甦える。クララと過ごした時間。この記憶の欠如がドクターの生を続けることへの不毛感を加速させていた。ドクターは自分が愛され、感謝され、そしていくばくかの人助けもできたことを思い出す。充実した時間を生き抜いたのだと。そして今自分が1stドクターと似たような不安を抱いているだけなのだと気がつく。

自分が自分である限り、この旅を続ける限り、そこには新しい何かがあり、希望がある。

 

”Doctor, I let you go."

 

私の好み度:⭐️⭐️⭐️⭐️/5

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