ドクター・フーで英語の壁殴り中

英国のSFドラマ”Doctor Who”の小説やオーディオドラマを攻略中

Doctor Who: Scratchman

トム・ベイカーが書いた4代目ドクターの冒険!

Doctor Who: Scratchman (English Edition)

Doctor Who: Scratchman (English Edition)

 

元々は、トム・ベイカーと共演者のイアン・マーターが映画を目指してドクター・フーの撮影の合間にアイデアを出し合って書いたシナリオが元になっているということだが、本当に面白かった。

 

 

あらすじ
ドクターはサラ・ジェーン・スミスとハリー・サリバンと共に島の浜辺でピクニックの準備をし、ラウンダーズをして遊んでいた。ボールを遠くに飛ばしてしまったドクターがボールを取りに行くと、ボールはぼろぼろになった聖職者の服を着せられたカカシの手の中にあった。やがて3人はそのカカシが元々は人間であることをつきとめ、しかも人間からカカシへの変態は現在進行形で起こっていることで、被害がこれ以上拡大しないよう3人は島民に避難を呼びかけるが誰も相手にしてくれない。ドクターはカカシを撃退するためタイムロードの技術を用いてカカシを解体できる蛾を生み出すことに。しかし、ドクターの態度を不真面目と受け止めた島民たちから蛾を育成していたポッドを壊されてしまい、カカシを撃退する手段は失われてしまう。次々とカカシ化していく島民たち。ついにハリーとサラもカカシへと変化してしまう。

 

感想
結論から言おう。めちゃくちゃ面白かったし、最後はボロボロに泣かされた。

トム・ベイカーのストーリーテリング力はもう凄まじいとしかいいようがない。よくこんなこと思いつくなというくらい思いがけない展開をするし、事態はとんでもなく危機的状態なのについつい笑い転げさせられる。ふざけてばっかりと思ったら手のひらを返したように胸をつくようなシーンを食らわされたりした。導入からあっという間に物語の世界に引き込まれ、最初から最後まで本当にいたれりつくせりのサービス精神で楽しませてくれる。

荒唐無稽がディフォルトのあの世界をよくもまぁ迷子になることなく縦横無尽に駆け回らせてくれたことか。しかも常にドクターと一緒だ。こんなにドクターを身近に感じられた小説は初めてな気がする。というのもこの小説はドクターの一人称語りで進められるからだ。今まで私が読んだ中ではドクターの1人称語りの小説というのは記憶にない。しかも書き手はドクターを演じたトム・ベイカーだ。ドクターを演じた俳優がドクターの心理に1番精通していると考えて差し支えないと思う。そのドクターを演じた俳優トム・ベイカーが書く4thドクター。これ以上の説得力があるだろうか。

しかも読んでいると、そこここからトム・ベイカーのドクター・フーという作品への愛が伝わってきて、それだけでもう目頭が熱くなってくる。

書きながら色々と思い出すこともあっただろうなぁという感慨もさることながら、ドクターの物語をこれから紡いでいく後輩に対する暖かい励ましのようなメッセージも感じられて、読み終わったあとはドクターのこともトム・ベイカーのこともたまらなく好きになってしまった。

実はこの作品には4thドクター以外に、1st、2nd、3rdドクターと、10th、13thが登場する。ドクターが過去の自分と未来の自分について語ると、ついつい実際とかぶせてしまって、最初はドクター役を引き受けることに関するメタファーになってるのかとも思った。例えば10thドクターが登場する場面では、"ああドクター・フーが復活を遂げ、10thドクターが国民的人気を博した時、そんな気持ちでいたのか...”みたいな感じでついつい、トム・ベイカーの実際の心情だろうかと受け止めてしまったり、これはBBCのお偉いさんたちの反応だろうかとかいちいち関連付けをしがちになってしまっていたが、読み進めるうちに別にそういうことでもないのかなと。うまく言えないが、ドクターがドクターでいることと、ドクター役を引き受けることは限りなく心情や状況が似ている...ということなのかと。そもそも番組を存続させるためとった手段がそのままタイムロードの特性となったわけだから似ているのも当たり前なのかなとか。切り離せるものでもないし、あえて関連づけるものでもないのかなと。とはいえ、ドクターが過去や未来の自分に送るメッセージはそのまま歴代の俳優さんやこれからドクターを演じる俳優さんに向けるメッセージになっているようにも感じたのも事実だ。

要はこれはドクターを演じた者にしか書けない小説だと思ったのだ。加えて、トム・ベイカーが演技だけでなく書くことでも豊かな才能を持っていてくれたことにもう本当に力一杯感謝したくなる。読みながら、トム・ベイカーの作品をもっともっと読みたいと思ったのだが、残念ながらこれきりらしい。このストーリーはトム・ベイカーがドクター・フーを撮影している時にハリー・サイヴァン役のイアン・マーターとアイデアを出し合って書いたドクター・フーの映画用シナリオが元になっている。つまり、トム・ベイカーにとってこの作品は本当に思い出深いものだろうし、今回出版するにあたって特別な思い入れがあっだろうし、それだけに総まとめな気分でありったけの想いを込めて書いたのだろうなぁと。

はっきりと言ってしまえば、”これって遺言のつもりで書いたのかなぁ”って時折思ってしまったぐらいにトム・ベイカーの想いがビシバシ伝わってきて、読んでいてなんだかたまらない気持ちにさせられてしまったのだ。

サラ・ジェーン・スミス役のエリザベス・スレイデンもハリー・サリヴァン役のイアン・マーターも既に他界されてしまっている。この小説のなかでサラ・ジェーン・スミスもハリー・サリヴァンも本当に輝いていて、いろいろと書きながら二人のことを思い出していたんだろうなぁとか、このあたりは書きながら思い出し笑いしてたんじゃないかとか、ついつい思ってしまう。

そういった裏事情を抜きにしてもこの小説は他のドクター・フーの小説のなかでもずば抜けて面白い。というのも困難なテーマ、ドクターの根幹にかかわる問いから逃げることなくぐいぐいと恐れ知らずに突っ込んでいくからだ。かゆいところに手がとどく小説といおうか。そもそもドクターの小説を読むのはドクターの心情をもっと深く知りたいと思うからだ。

さて、この小説はまずドクターがギャリフレイで審問にかけられいるところからはじまる。ギャリフレイと世界の存続を危機にさらした罪で、ドクターは審問の結果次第では存在を消される危機に立たされている。ドクターはタイムロードたちにどういう経緯でそうなったかを釈明するために話しだす。それがサラ・ジェーン・スミスとハリー・サリヴァンとのこの冒険だ。最初はカカシからはじまり、やがてサイバーマンや悪魔と対峙することになる。とくにサイバーリーダーのくだりがほんとうにおもしろい。悪魔の嫌がらせでサイバーリーダーはドクターを手助けせずにはいられない体質になってしまうのだ。ドクターがもう追い詰められていよいよダメかもとなった時、助けにきてくれるサイバーリーダーの頼もしさったら。しかも当人はドクターなんか全然助けたくないのに助けずにはいられないから、すごーく悔しがったり落ち込んだりして、とにかく可愛い。ほかにも、たとえばドクターが敵の手に落ちて拷問されるシーンがあるのだけど、その拷問官がとんでもない倦怠感にとらわれている拷問官でドクターを痛めつけようにも、疲れすぎていて道具すら持ち上げられないとか、尋問はじめてもすぐに疲労してしまい、ちょっと休ませて欲しいとドクターの目の前で寝てしまうとか、もう事態はけっこう大ピンチなのだけど、大笑い。バカバカしさのぶっ飛び具合とさじ加減が絶妙で、ちょっとダグラス・アダムスのドクター・フーを思い出したりもした(共著がJames Gossだからかもしれない。彼はダグラス・アダムスのシナリオ"Doctor Who And The Krikkitmen"とDoctor Who: The Pirate Planetのノベライズを書いている)。

とんでもなく切ないシーンややるせないシーンもしっかりあって、胸が痛くなったり、涙腺やられたり。とくに最後はドクター・フーのファンなら絶対に泣く。あれを読んで泣かないでいられるフーヴィアンはまずいないだろうというぐらい、とんでもない爆弾が投下される。もうね、ほんと恐るべしトム・ベイカー。

 

ドクターが恐れているものは何か?

 

全編を通じて投げかけられる問い。これだけでももう読まずにはいられない。
そして読み終わったら、ドクターのことがたまらなく愛しくなっている。
ああ、もうドクターってば!!
大好きだよ!! コンチクショウめ!!

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️/5

 

📝 quotes from Doctor who Scratchman

 

The thing about friends that I've never got the hang is saying goodbye to them, and humans live such mayfly lives. I fear for them every moment they're with me, and fear the loss of them like an ache. Some friends make us kinder, some friends make us shaper. But-and this is the point with friends around, there's always someone to tell you when you're wrong...and sometimes they're right! That's what I'd like you Time Lords to think about. Who's around to tell you when you're wrong? Who are you afraid for? Who are your friends?

 

Sarah once asked me why I was afraid of dying as I'd just wake up as someone else. "It's the someone else bit that gets me, " I told her. "Being the Doctor suits me. And, it's selfish of me, I know, but I just can't stand the idea of someone else getting to do what I do. I'm a comfy pair of shoes - I fit the Doctor just right. the Doctor's had other shoes before, and will have many more - some brogues, some stilettoes, but like all shoes, they take a bit of wearing in, whereas, look at me. I'm sturdy and there's quite a bit of mileage left in me. See? Being the Doctor comes down to having a good sole." I don't think she appreciated the pun - so few people do. But that's my point. My Fear of death is simply because I'd miss this life.

 

Don't tell me how to be the Doctor until you've learned it for yourselves. It's not about fighting armies, it's not about dark secrets, it's not even about being clever. It's about looking at a big door and never ever being afraid to open it.

 

This! This is terrifying. This, Doctor, this is what you fear! An unending fury and hatred. Unstoppable! It's magnificent!

 

I showed him everything I've ever faced. The secret to being me is that I've never run away. I've never been afraid. I can't afford to be. That's what being the Doctor is all about. Don't you think?

 

I hope I've been a good Doctor. I hope you've enjoyed having me around. And I'll be terribly sad if I ever have to stop being the Doctor. So, I won't. But if it happens, then I hope you'll always remember me fondly. Mind you, if someone like me could get away with being the Doctor... Well, who's to say you can't too ...?

 

Audiobookも聴きたくなってきた!

今ならすんなり聴けるかな?

Doctor Who: Scratchman: 4th Doctor Novel

Doctor Who: Scratchman: 4th Doctor Novel

 
<